恋のコーチは期間限定
「この辺りでもいいよ。
 心臓に近いところに付けて。」

「見えるところじゃないよ?」

「見せちゃダメって言うから。」

「そ、そうだけど。」

 蒼は私が承諾していないにも関わらずネクタイを緩めてワイシャツのボタンを外し始めた。

 ただでさえネクタイを緩める姿が色っぽいのに、全て露わにならない素肌が余計に艶かしくて触れることに躊躇する。

「ほら。」

 促されておずおずと顔を近づけてそっと唇を触れさせた。

「くすぐったいよ。」

 文句を言う蒼に私も文句を言った。

「だって付け方、よく分からないの。」

「………襲われたいの?」

「え?」

「いや……こっちの話。
 ……噛み付くというか、吸い付いて。」

 見よう見まねで熱く噛みつくようにキスをすると吐息を漏らした蒼の色っぽい息遣いに体の奥が熱くなる。

 体から唇を離すと目があって欲情を隠そうともしない蒼がその唇に自分のそれを重ね合わせた。

「我慢の限界………。」

 覆い被さった蒼にしがみつくのが精一杯だった。







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