恋のコーチは期間限定
「私を思って、約束よ。
 その約束が裏切られた時に復讐ってなるみたい。
 言い伝えのおとぎ話まで載ってるわ。」

「私を思って……の結末かぁ。
 なるほどなぁ。
 なんだかあの可憐な花の見方が変わりますね。」

「そうね………。」

 少し遠い目をした美希さんが元彼に想いを馳せているのが分かった。
 シロツメクサはもしかしたら元彼との思い出なのかもしれない。

「好き……だったんですね。彼のこと。」

 ふふっと軽く笑った美希さんは「うん。そうね」とこちらの胸が痛くなるほどの切ない顔をした。

 思わず手を伸ばして頭を撫でる。
 そんな顔を見ていたくなかった。

「ヤダ。慰めてるの?」

 涙に滲んだ声が強がって突っかかってくる。
 それさえも可愛い。

「ううん。甘やかしてるの。」

「甘えられるような女じゃないわよ。
 浩二くんになんて。」

 ……浩二って誰だよ。元彼の名前?
 胸が音を立てて軋む。

「だから俺、蒼葉です。」

「うん。分かってる。悠太くん。」

「………飲みましょう。美希さん!」

 とにもかくにも美希さんが俺に興味がないことは火を見るよりも明らかだった。







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