恋のコーチは期間限定
「お姉さん。ソフトテニス経験者?」

 同じく隣のコートで一人練習していた若者に声をかけられた。
 私も25歳だから若者の部類に入っていいかもしれないけれど、声をかけた人は20そこそこの顔をしている。

 明るめの茶色の髪はつき始めた夜間用のライトに照らされてさらさらと揺れ、色素の薄い肌によく似合っている。

 お姉さんと言われてもまぁ仕方ない年の差を感じた。

「えぇ。見ただけで分かるの?」

 リストバンドでしたたる汗を拭きながら話す若そうなその人は、隣のコートギリギリまでこちらに歩み寄っていた。

 コートとコートはネットで仕切られており、ボールが1コート毎に混ざらないようになっている。

 私も歩み寄ると思いの外、背が高い。
 男の人と男の子の狭間で上手く成長した青年と少年の間くらいの顔立ちの若者だ。

 鼻筋の通った整った顔立ち。
 意思が強そうなキリリとした目。

 なかなかのイケメン。

 これでテニスやってるってモテた人生を歩んでるだろうな。
 関係ないのに半分僻みが混ざりつつその人を観察した。






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