恋のコーチは期間限定
「美希さん!」

 テニスコートが僅かに見える場所まで来ていた私のところに荷物まで持った蒼葉くんが駆けてきた。

 遅いからもう来ないと思っていたのかもしれない。

 私はといえば、逃げてしまいたいのに足は全然思うように動いてくれなくて思わずその場にしゃがみ込んだ。

 息を切らす蒼葉くんも私の前でしゃがんで同じ目線になった。
 そして自分の顔を片手で覆った。

「俺、さかってた?」

 さかっ……さかってって………。

 片手で隠れている先の、指の隙間から見える顔はバツが悪そうな表情を浮かべていた。

「ごめん。その、あまりにも美希さんの反応が可愛くて。」

「可愛くないってば。」

「可愛いよ。」

 甘い台詞を吐く蒼葉くんが手を伸ばして頬に触れた。
 こういう仕草がやっぱり慣れなくてビクッと肩を揺らす。

「………ごめん。」

 謝った彼は手を引っ込めた。
 そして私を真っ直ぐに見据えて言った。







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