恋のコーチは期間限定
「前に……最初に話した日。
　球技大会に恋人を連れて来る人もいるって教えてくれた。」

　急に球技大会の話になって驚きつつも「そうね。そんなことも話したのね」と答えた。

「見せつけてやればいい。
　俺を利用すればいい。」

「え………？」

「元彼が来るんだろ？
　だから見せつける為の恋人も必要だって。」

「それは……そうだけど。」

　言い淀む私に蒼葉くんは凛とした顔で言った。

「だから俺を利用しなよ。」


　おもむろに立ち上がった蒼葉くんに腕を引っ張られて立ち上がる。
　そのままテニスコートには向かわずに違う方向へ歩き出した。

　どこに連れて行かれるのか分からないまま歩き続けるとテニスコートからほど近いアパートの前で足を止めた。

　そしてスポーツバッグから鍵を取り出したところからここが彼のアパートのようだ。

「片付けはしたけど……あんまり期待しないで。」

　そう言いつつ彼に腕を引かれてアパートのドアの内側へ。
　散々、軽率な行動をして、今回だって……と思うのに彼の思い詰めたような表情が気になって放っておけなかった。





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