恋のコーチは期間限定
「昨日のお詫びに美希さんに夕食を作りたい。」

 玄関に入ると呟くように言って、また腕を引いて部屋へ入っていく。

「料理、得意なの?」

「料理は化学だよ。
 材料を組み合わせることによる化学反応が……。」

 小難しい説明は全く頭に入ってこない。

 彼は「またやっちゃったな」と苦笑して「とにかく待ってて」と、私をローテーブルの前に座らせた。

 なんだか懐かしい。
 最初もこんな会話したなと微笑む。

 廊下の脇にあるキッチンに立つ背中がワンルームの廊下では窮屈そうだ。

 やっぱり背、高いなぁ。

 そんなことをぼんやりと思った。








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