恋のコーチは期間限定
「とにかく今日は帰るわ。」

 回されていた彼の腕を外して立ち上がると、座ったままの蒼葉くんと目が合った。

「どうして……。」

 捨て犬のような瞳を向けられて胸が痛い。

「どうせ着替えなきゃいけないしクレンジングも化粧もないし。」

「持って来て置いてくれても構わないです。」

「でも…………。」

 面倒臭い。その一言に尽きる。

 会社に行く服を一通り持って来ないと意味ないし、そんなのどれだけ運べばいいの?
 その上、化粧品にクレンジング、その他諸々。

 そんな風に思っちゃうから可愛くないのよね。きっと。

 でも、そういうのは面倒臭いと思ってるけど、彼の提案は悪くないかって思う自分はいた。

 彼と過ごす時間はそれ程までに心地よかった。







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