恋のコーチは期間限定
 そう思ったのも束の間………。

「でも俺がコーチなんてしたら妹さんは妬くんじゃないですか?
 俺、モテるから。」

 ん?んん?
 何をおっしゃってるのか。

 好印象だったイメージがガラガラと音を立てて目の前で崩れていく。

「それにお姉さんも俺に教わったら緊張して練習どころじゃないんじゃないですか?」

 したり顔の彼に思わず吹き出していた。

 彼は呆気に取られた顔をしている。

「望美と同じなら大学一年生でしょ?
 高校生に毛が生えたくらいの大学生じゃない。」

 まだ4月の中頃。
 つい最近まで高校生だったのに大人を舐めてもらっては困る。

 そりゃ大学やサークルの中ではおモテになるかもしれないけど、それを私みたいないい大人に……。
 可愛い勘違いだなぁと目を細めた。

 僅かに赤面した彼はむくれて「結婚だってできますよ?」とぼやいた。

「法律上はね?」

 あーぁ。可愛げのないことこの上ない。
 年下を虐めて楽しんでるなんて。

「ごめん。からかって。
 元々可愛げがない性格なの。
 教えるのなんて嫌になっちゃうと思うわ。」

 コーチ役をお願いするのは諦めてコートに戻る。
 ボールを拾ってまたサーブの構えに入った。




< 7 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop