恋のコーチは期間限定
「あと、このまま帰って美希さんの手料理が食べたいです。
 あ、いや。美希の手料理が食べたい……ってかっこつかないや。
 慣れないことするもんじゃないね。」

「フフッ。そうね。
 じゃお礼に何か作るわね。」

 美希さんが笑ってくれるなら道化になるくらい構わない。

 微笑んで笑顔になった美希さんの手を優しく引いて、帰ろう。と促した。

 美希さんのアパートまでの帰り道を何も話さずに歩いた。
 手を繋いで隣を歩くだけで胸が高鳴って会話が続かなくなる。

 そんな初々しい関係をやり直すんだ。
 ゆっくり、ゆっくり……。
 それでいつか、俺のことを見てくれればいい。

 愛おしくて手を出せば届いてしまう距離だけれど、それをすれば今度こそ全てが終わる。

 手の届かないところにある美希さんの心も手に入れる為に……。
 俺は重ねている手のひらに少しだけ力を込めた。




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