幼なじみに襲われて
私が朝比奈優に恋をしたのは、いつだったかもう思い出せないけれど、これが恋なんだと気づいたのは小学6年生のときだ。
それまでも優のことはかっこよくて誰にでも優しくて頭もスポーツもできて周りも女の子同様に熱をあげていた。といっても、昔から内気な私はみんなみたいに表だってキャーキャー騒いだりはしていなかった。まぁ、内心は優と話すだけで心臓がバクバクだったんだけど。
でも、その頃は流行りのアイドルを好きになる程度だった気がする。それに、身近な男の子が優しかいなかったっていうのもある。人見知りの私が自分から男の子に話しかけるなんて無理な話だからだ。その点、優は産まれたときからずっと一緒だったから、他の男の子とは違っていた。

そんなある日。小学校最後のクリスマス。我が家は優の家族や友達を呼んで毎年恒例のクリスマスパーティーを開いていた。
そこそこ、というかかなり広いリビングに大勢のお客さんがその年もいた。そのほとんどが芸能関係者だが、近所のご家族もいる。それはひとえに両親の人柄ゆえだろう。
私はその年も母親行きつけの美容室で頭から爪先まで整えられ、優の兄である慧にぃとその彼女の聡美さんと一緒にいた。慧にぃは私たちよりも4つ年上でこれまた絵に書いたような白馬の王子様だった。
優とは対照的な色素の薄い髪色に優しそうなタレ目。その彼女さんの聡美さんは慧にぃと同い年で清楚な美女。私にとってはお姉さんみたいな存在だ。

「そういえば、優くんはいないの?」

どういう流れでその話になったかは覚えてないが、聡美さんがそう言った。確かにその日はまだ優を見ていなかった。
その時だった。
リビングに入ってきたのは、小学生らしいまだあどけなさはあるものの黒いスーツでビシッと決めた優とその隣には同い年とは思えない大人っぽいクラスメイトの三枝麗奈が優の腕に掴まってこちらに歩いてくる。
そのまま私の両親と優の両親と話をしているのを私は部屋の隅から見ていたのを覚えている。

「朱莉ちゃん大丈夫?」

どれくらいそうしていたのか分からないが聡美さんにそう言われて、自分がボーとしていたことに気づく。別にこのパーティーに友達を呼んできても構わない。だから、優が三枝さんを連れてきても構わないのに何故だか私はあの二人を見て、イライラしていた。それからはあまりパーティーを楽しく感じられずふて腐れていたような気がする。それをみていた聡美さんに

「朱莉ちゃんは優くんが好きなのね」

そう言われてこの気持ちが嫉妬だということと、私は本当に優が好きなんだと気づいた。

いつも一人でいるとそっと側に来てくれて一緒に遊んでくれる優が。
転んで泣いてるときに「泣くな」と言って頭を撫でてくれる優が。
毎日「おはよう」とやんちゃそうな笑顔で挨拶してくれる優が。
困ってる時や悩んでる時、すぐに駆け付けてくれる優が。

いつの間にか好きになっていたんだ。

…まぁ、そう気づいた時には半分失恋したようなものだったが。
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop