幼なじみに襲われて

同居生活

両親が旅行に行って、一週間がたった。
つまり優と一緒に暮らし初めて一週間がたったということになる。
今のところはバレてない。徹底的に学校では優を避けてるし、家に帰るのも周りを気にしながら玄関に入ってる。そんな努力のお陰で私と優の関係は前までと同じくただのクラスメイトもしくは幼なじみになってるのだが、今私は別のことに恐怖を感じていた。

正に今がその恐怖の現場なのだが…

「あんた、ちょっと奏汰にかまわれたくらいで調子にのってんじゃないよ。あれくらい奏汰にとっては何でもないんだからね！だいたい、あんたみたいなド地味な女、奏汰が相手するわけないんだから！父親が社長で奏汰とちょぉーと近いからってあんまり馴れ馴れしくするとただじゃおかないんだから」

私は今、マンガなどでよくみる下手なシーン、体育館裏に3年生のお姉さま方に呼び出されていた。

「なんとか言いなさいよ！」

なんとかって言われても、好きでああなったわけじゃないし…先輩と話たのだって久しぶりだったし、あれ以来先輩とは話してないし…。
というか、こんなことしてる暇は私にはなくて、明後日からの中間テストに向けて勉強しなくちゃいけないんだけど！私の貴重な昼休みを返せっ！…なんて言えるわけもなく…。
かれこれ5分以上こうしている。

何も言えずに、ひたすら前だけを見ていると、

「…何良い子ちゃんぶってんの！？ほんとムカつくｯ!!」

バチンっ

「…！？」

頬に強烈な痛みがあったと思ったら、口の中が血の味がする。頬が焼けるように熱い。
どうやら、ぶたれたみたいだ。わりと予想してた展開に思わず笑えてしまう。歯を食い縛るのは忘れてたけど。

「はぁ！？何笑ってんの！？バカにするのもいい加減にしろよ！このブスっ!!!」

また手が振りかざされたと思ったら、目の前に影ができた。

「はい。そこまで。もう一度手を出したら君たちとは遊ばないよ？」

いつもと同じ柔らかくて優しい声なのに、そこに少し怒気があるようで全員硬直する。
そして、全員顔を真っ赤にしながら、走り去っていった。

「あーあ…頬赤くなってるね…大丈夫？」

ひんやりとした冷たい先輩の手がぶたれたところを優しく撫でる。

「朱莉！大丈夫？ごめんね、早く駆けつけられなくて…先輩探すのに時間かかっちゃって…」

そういうと、先輩の後ろから美優が顔を出して、駆け寄ってきた。
どうやら先輩をつれてきたのは彼女らしい。

「ごめんね、僕のせいで…さっきの子達にはもうしないように言っておくから。」

そういう先輩は明らかに落ち込んでいて、さっきの声色はなくなっていた。

「いえ、これくらいどうってことないです。何も言えなかった私も悪いですし…。」

じっと見つめてくる先輩を前にただうつむくしかできない私。そんな二人のなんともいえない空気を察してか、

「じゃ、じゃぁ、私は朱莉を保健室に連れていくんで！先輩、ありがとうございました！さ、行くよ、朱莉」

美優に強引に連れられて、言えてなかったお礼の言葉を伝えて引きずられるように保健室に向かった。