大人の階段を駆けあがる
心にきみという恋を描く
初めて彼氏ができたのがいつだったか覚えていない。
けれど、物心がついた時から私の周りには常にお姫さま扱いをしてくれる人たちがいっぱいいた。
『本当に可愛いよね』
『お人形が歩いているみたい』
みんな私を見ると必ずそう言う。
可愛い……?
そんなの自分が一番よく知ってる。
中学のセーラー服は誰よりも似合ってるし、膝上のスカートから伸びる足だって誰よりも細い。
切り揃えられた前髪も毎朝くるくるに巻いているツインテールの髪の毛も、全部ぜんぶ、可愛いからやっていること。
「ニャアア」
中学生になって早半年。学校では2学期がはじまったけれど、私の生活は特になにも変わってない。
ひとつだけ変化を挙げるとしたら通学路にたまに出没する三毛猫と目が合うようになったぐらい。
「猫だ、可愛い。ふわふわ~」
小学生たちが群がるように猫を囲んで頭を撫でていた。
たしかに猫は可愛いと思う。でも完成度で言えば私のほうが上。
私は猫みたいにエサを与えれば誰にもすり寄るような安いことはしない。むしろエサなんてなくても、みんな私に寄ってくる。