大人の階段を駆けあがる
「うわ、月岡さんだ。超可愛い」
「俺、この前話しかけたよ。めちゃくちゃいい匂いした」
「えーお前だけズルい」
男なんて本当に簡単。見た目重視のバカなヤツらしかいないから猫のように頭を撫でさせなくても、うざいくらいちやほやしてくれる。
そんな中で唯一、私のペースを乱してくる厄介なヤツがひとり。
「……ハア……ハア……ッ。すずめちゃん待ってよ!」
息を切らせて追ってくるのは同級生の田崎瑠生斗。(たさきるいと)。
名前だけ見ればとても強そうに感じるけど、田崎は超がつくほど、ひ弱で女々しくて。おまけに声変わりもしていないから、学ランを着ていなかったら女の子に見えるほど男らしくない。
「なによ」
暫く無視していたけど、ずっとストーカーみたいに付いてくるから堪らずに睨みつけた。
「なんで違う道を使ったの?俺すずめちゃんが来るの待ってたのに」
「は?約束なんてしてないけど」
「でも昨日の帰りに明日は一緒に学校に行こうって伝えたよ」
田崎が言葉を発するたびに私はイライラして仕方がない。
みんながお人形だと言ってくれる可愛い顔も引き吊ってしまい、コイツと話していると眉間にシワができそうで本当に無理。
「キモいから、そういうの」
私は媚びないし、いい人だと思われなくても平気。
田崎に限らず容赦なく思ったことを言う性格だけど、何故か田崎はダメージを受けない。