【完】武藤くんって甘くない
「武藤くーん、英語の教科書貸してー。忘れちゃった」


ん?


他のクラスの女子が教室に入って来た。


肩の長さに綺麗に切り揃えられた黒髪がサラリと揺れる。


メガネの似合う背の高い女の子だ。


見るからに賢そう、そして美人。


…ふたり、お似合い!?


やだやだっ、あたしったらなにを考えてるの。


「いーけど。ちゃんと返しに来いよ」


「わかってるー」


友達なのかな、やけに親しげ。


同じ中学…ではないよね?


こんな子知らない。


「お昼一緒に食べない?教科書はそのときに」


ええっ!


「やだね。俺いなかったら机の上に置いておいて」


やったー!


さすが武藤くん!


心の声は顔にもでちゃうみたいで、ニヤけてしまった。


あたしはこれ以上顔がゆるまないように、必死で頬を押さえた。




「たまには付き合ってよ。暇なんでしょ?」


「暇じゃねーよ」


そーだ、そーだ!


武藤くんは忙しいんだから。


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