【完】武藤くんって甘くない
「大丈夫です、逃げたりしませんから」


「それならよかった。おっとまた電話だ。ちょっと席外すね、ゆっくり飲んでて」


あたしを置いたまま、店の外へ出ていく。


スーツを着た男の人って、お父さん以外は身近にいないからとっても新鮮。


武藤くんがスーツを着たら…あぁ、これ以上ないってぐらいカッコいいよねぇ。


この先、そんな姿を見ることもないんだろうなぁ。


高校を卒業したらそれっきり?


ううん、クラス替えしたらもう顔も合わせないかも。


そんなの嫌だぁー。


ああ、未練タラタラだよ。


フられたっていうのにこんなにもまだ武藤くんのことが大好き。


オレンジジュースを飲み干したところで、男の人が戻ってきた。


「ごめんね、ひとりにして」


笑顔が爽やかだなー…そしてこの気づかい。


きっとすっごく優しい人。


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