【完】武藤くんって甘くない
「なりゆきでカラオケ?小松とでさえ嫌がってたのに」


「それはっ…断りきれなくて…」


「そういう問題かよ。まず顔の締まりがない、隙がある、気が緩みすぎ」


顔がニヤけてるのは、武藤くんがこっちを見るからだよ?


「なにか言いたそうだけど聞いてやらない」


言い訳さえも受け付けないと?


厳しいっ。


「どの部屋だよ」


「あの、突き当たりの…」


指をさした方向に武藤くんが顔を向けた途端、転がっていた男の人が武藤くんに襲いかかった。


ガッ!


「きゃあっ!」


武藤くんは拳を軽やかに避け、勢い余って男の人は壁に激突してしまった。


そして頭を押さえている。


その姿をチラ見した後、武藤くんはあたしの手を取り歩き出した。


手っ…手ぇっ‼︎


初めての手繋ぎが、まるで連行されるように雑な扱いだけど…それでも嬉しすぎるよ。



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