すべては、
影が牙をむく時
何も知らない旦那が戻ってきたのは家を出て30分程経った時だった。


木下さんは何もなかったかのように旦那と談笑しお酒を飲み交わしている。


来たときと変わらない態度にさらに恐怖が増していく。


そして、それを台所で眺める私も…


何もなかったかのように装った。






















次の日は土曜日だったが、急用があると旦那が会社へ出掛けて行った。


私にとっては好都合だった。


昨日のことを思い返す度、恐怖と羞恥でどうにかなってしまいそうだったから。


暗い顔ばかりしていたら旦那に心配を掛けてしまう。



「ダメダメ!買い出しでも行って気分転換しよう!」



と、家を出たは良いが全く心が晴れることはなかった。


何をしていても、昨日の事を思い出してしまう。


買い物袋を片手に家路に着き、角を曲がれば家が見えるというところでバイクのエンジン音が聞こえた気がした。



もしかして…




自然と足が速くなっていく。


角を曲がり家が見えれば、門の前に目を引く赤いバイクが停まっている。


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