すべては、
背にしていたシャッターが上がり、眩しい程の光の中に立っていたのは、心の中で何度も助けを求めた人だった。


「東さん…」


どうして東さんがここに…

疑問は浮かんだが、『東さんが助けに来てくれた』今はそれだけでいい。

私は彼の胸の中に飛び込んだ。

力強い腕が受け止めてくれる。


「実里、もう大丈夫だ。」


暖かい腕の中、泣きそうになるのを堪えた。


「実里さんから離れろ。」


殺意を剥き出しにして、低い声が追ってくる。

恐怖で私の体は固まる。

だが、東さんは動じることなく木下さんに視線を合わせた。


「お前はもう実里に触れることさえ出来ない。これからは塀の中で暮らすんだからな。」


「何…」


「話は全部聞かせてもらった。
木下流路、お前を監禁、殺人の容疑で逮捕する。」


光の中から沢山の人影が表れ、工場内へと流れ込む。


怖かったが、彼の腕の中で振り向けば、木下さんは抵抗することなく手錠を掛けられていた。


手首に落ちていた視線は、カチリと手錠が閉められた音の後、真っ直ぐにこちらを射ぬく。


東さんを射殺さんとばかりの鋭い視線だったが、彼はそんなもの気にも止めないといった感じで私にスーツのジャケットを掛けてくれる。


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