すべては、
「まあ、昔から言うでしょ。騙すなら味方からってね。
そのおかげで演技に現実味が帯びたでしょ? 」


そりゃあ帯びましたけど…


「それにしたって酷すぎますー!私、係長が本当に死んじゃったんだと思ってスッゴく泣いたんですからね!もう!泣き損ですよ!」


「あのまま、死んでれば良かったのに。」


先輩は悪態をつくようにぼそりと呟く。


「えっ!?東酷くない!?俺、かなり冷たい海に落ちたんだけど!」


「係長~実里に手ー出すからー」


悲しむ係長の肩に朝比奈さんが肘を乗せ、呆れ返った声を出すが…何故か目は笑っている。


手を出す?それって会社行く前のキスのことだよね?

おとり捜査中に起こったことは、この耳につけた片方のイヤリングに内蔵される高性能の盗聴機が全て拾ってしまう。

因みに、もう片方のイヤリングには発信器がついている。


もうーあの時は本当焦った。
チュッて音したから、絶対皆に気づかれたし…
何より隠しカメラでバッチリ撮られてた。

それに、台所で木下さんに襲われた時はどうしようかと思ったよ…
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