すべては、
「せーんぱーい!」


なおも引き下がらない私は、行こうとする先輩の腕を掴み重心を低くし踏ん張る。


「このままじゃ、次の仕事に支障が出ますー」


「………」


沈黙の後、また溜め息が落とされる。



やっぱり駄目か…

と、項垂れ諦めかけた時、ふわりと体が浮いた。

顔を上げれば目の前に先輩の顔。



「その貧弱な体、俺に見せるな。目障りだ。」



私は横抱きにされ、先輩は視線を遠くへ向けていた。



「は、はい。すみません。」



ジャケットを手繰り寄せ、極力露出した肌を隠す。



「やっぱり先輩優しいですね。そんな先輩が好きです。」


今回で先輩に言うのが何回目になるか分からない「好き」も、例外なく流されるのは分かっている。

だが…


「お前…俺のこと好きなんて言っておきながら、誰でも感じるんだな。」



先輩がぼそりと呟く。



先輩の冷たい言葉に、私の心が鉛のように重くなっていく。



先輩がそんなふうに思っていたなんて…

私は俯くと、目頭が熱くなっていくのを感じた。



「先輩酷いです…」



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