すべては、
木下さんは電話横に飾ってあった写真を手に旦那を質問攻めにしていた。


「奥さんとの馴れ初め聞かせて下さいよ~」


「馴れ初めな~忘れちまったな~」


「ああー、その顔は隠してますね!良いじゃないですかー」


絡まれているに等しい攻めに、私は助け船を出すように二人の間に出来立ての料理を出した。


「そんなに面白い話じゃないですよ。」


「えー、余計気になりますよー」


旦那の方を向くと目があった。

この目は…どうやら本気で忘れてるようだ。

仕方がなく、私が説明することにした。


「学生時代に、バイトをしていたコンビニで酷い酔っぱらいに絡まれているところを助けてくれたんです。そこから知り合いになって、付き合うようになって、って感じですね。」


「主任格好いいですね!見直しました!」


「おいおい、俺って見直されるくらいの好感度しか持たれてなかったのか?」


「だって、こんなに可愛らしい若い二十歳の奥さんもらって、もうそこからして犯罪じゃないですかー」


「あらやだ、可愛らしいなんて。」


と、本気で喜べば「100パーセントお世辞だよ。」なんて犯罪者呼ばわりされてショックを受けていた旦那が水を指す。


「はいはい、分かってますから。」


「おっ、ビールあるか?」


私の話は終わりだと言うように、旦那は空のビール瓶を振って次のビールを要求してくる。
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