すべては、
不意に後ろから声がして飛び上がるほど驚いた。
お陰で膝をぶつけたデスクが大きな音を立てる。


「先輩、ビックリさせないで下さい。」


「お前が勝手に驚いただけだ。」


確かにそうですけど…


「で、何やってんのお前?」



再度聞かれたが…

昨日怒らせた本人に、怒る原因となったこれの話をするのは話しずらく、自ずと視線を下げながらもごもごと説明する。



「ピアスだったらもう落とさないと思いまして…
それでもピアスの穴が安定するまでは、イヤリングなんですけど…」


「それで、もう誰かに頼んだのか?」


それまで腕組みをしてだまって聞いていた先輩が口を開いた。


「それが、皆さん全然来なくて…まだなんです。」


「俺がやってやろうか?」


「えっ!?いいんですか!?」



予想していなかった申し出に驚き、私は勢いよく顔を上げた。


「もう落とすなって言ったのは俺だしな。」



怒られて顔を会わせるのが気不味かったから、頼む相手の中に先輩は入れていなかった。

だが、先輩もピアスをしているし、開けてもらうには絶好の相手に違いない。


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