すべては、
腰を折り、オープン状態の明細書を床から拾い上げてくれたのは、東先輩だった。



「先輩、ありがとうございます。」



先輩の目が明細書に止まる。



あっ…これはマズい予感が…



「これのどこが、安月給だって?」



顔を上げた先輩の顔は機嫌が悪そうだった。



「いや、これは、臨時の収入で私もビックリしてまして…」


「財布カツカツねー?」


「カツカツで…」



騙そうとしたわけではないが、顔が近づく先輩から不自然に目を反らさずにはいられない。


カツカツは本当なんだけれど、だんだんと声が小さくなっていく。


「すみません!ランチ代お支払します!」


先輩の視線に耐えられず私は声を上げた。

そんな私を見て先輩が薄く笑った気がしたが、きっと気のせいだろう。


「いい。奢ったのを今更払ってもらうほどケチじゃねー、だが…」



だが?



「ランチ代分は働いてもらう。」


「!?」


「お前、今日暇か?」


「暇ですけど…」


「じゃあ、仕事終わったら晩飯作りに来い。」




晩飯…作り…に?





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