腹黒上司が実は激甘だった件について。
ちょうどデザートが運ばれてきたので、私の思考はデザートプレートに切り替わる。
花より団子。
坪内さんよりデザート。

ガトーショコラにクリームとフルーツが上品に盛り付けられている。
美味しそうすぎる。

「坪内さんはデザート食べないんですか?」
「甘いのはあまり。秋山の食べっぷり見てた方が楽しい。」

大口を開けて食べようとしていたので、ちょっと控え目に口をつけた。
しっとり濃厚な、それでいて甘さ控え目なガトーショコラが口いっぱいに広がる。

「ガトーショコラめっちゃ美味しいですよ。少し食べますか?」

お昼の一件で気を許してしまったのか、ただの気の迷いなのか何なのか、思わず声を掛けてしまった。
坪内さんは笑顔を称えながら、

「じゃあ一口。」

私が手にしているフォークを、私の手ごと掴んでひとすくいして口に入れた。
さながらあーんをしたような形だ。
ぼんっと顔が熱くなるのがわかる。

「うん、確かに美味い。」

照明が薄暗くてよかった。
ほんとに、勘違いしちゃうから。
このイケメン王子め。
行動が読めないよ。

ちょっと待って。
さっき、秋山は勘違いしていいよ。って言わなかった?
それって坪内さんを好きになってもいいってこと?

まさか?

いやいや、そうやって人の心を弄んで、ほくそえむに決まっている。
イケメン王子ではあるけど、あの人は腹黒上司で意地悪な悪魔なんだから。
勘違いするな、私。

それに、そもそも私は恋愛する気なんてないんだから。
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