腹黒上司が実は激甘だった件について。
おかげで坪内さんとランチをする機会も増えた。
毎回律儀に奢ってくれようとするけど、それはさすがに断っている。
気持ちは嬉しいんだけどね。
借りを作りたくないし、そこまでされると餌付けされてるみたいだもん。
なのでちゃんと自分で払う。

新しいお店を坪内さんと開拓するのも楽しくなってきた。
坪内さんはイケメン王子様だから、おしゃれなお店が合うよなぁなんて思ってたけど、今日はおしゃれとは無縁な感じの小さなラーメン屋さんでランチだ。

運ばれてきたラーメンをズルズルとすする。
イケメンはラーメンを食べてもイケメンで笑えた。

「何だよ?」

笑った私を見て、坪内さんは怪訝な顔をする。

「坪内さん、ラーメンも似合うなあと思って。」
「はあ?」

私の言葉に、訳がわからないといった顔をする。

「だって坪内さん、社内で王子様って言われてるんですよ。王子様とラーメンって結び付かないのに、似合うんだもん。反則ですよ。」
「王子様ねぇ。何を思ってそんなこと言うんだか。」

坪内さんは心底興味無さそうに、呆れた表情でラーメンを食べる。

「もしかして王子様の自覚無しですか?」
「お前も俺を王子様だと思うの?」

「うーん、見た目は王子様みたいですけど、中身は違いますからねえ。腹黒王子ってとこですかね?」
「てめっ、上司に向かってよくそんなこと言えたな。」

思わず本音が出てしまって、しまったと口元を押さえたが、当の坪内さんはお腹を抱えて大笑いをしている。

「秋山のそういうとこ好きだわー。」

笑顔でさらりと言うので、一瞬聞き逃したかと思ったけど…。

好き?
何が?
そういうとこ?
どういうとこ?

私にはさっぱりわからなかったけど、その日坪内さんは何故か上機嫌だった。
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