腹黒上司が実は激甘だった件について。
坪内さんのマンションは、2LDKで広い。
一人暮らしなんて1LDKでも十分だというのに。
贅沢すぎでしょ。
よっぽど役職手当貰ってるのかなぁなんて、邪な考えが過ってしまう。

「好きに使っていいから。」

そう言われてもね、好きに使えるわけないじゃないですか。
初めてのお宅で、しかも異性の上司で。
一応好きとか言われている身としては、少々身構えてしまう。

リビングのソファーにちょこんと座ったまま、私はぼんやりしていた。
何でこんなことになったんだっけ?
私はビジネスホテルを探していたハズだったんだけど。
震えるスマホを見れば、奈穂子からメッセージが届いていた。
そうだよ、奈穂子が坪内さんに余計なことを言ったから。
だからこうなったんだ。

メッセージを開くと、

【どうなったか聞かせてよね(笑)】

なんて、軽い調子の文字が飛び込んできた。
奈穂子め、私が困るのを楽しんでるな。
どうなったもこうなったも、坪内さんのお宅にお邪魔しちゃったわよ。
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