腹黒上司が実は激甘だった件について。
坪内さんがお風呂に入っている間に、少しばかりキッチンへお邪魔する。
食材と調味料を確認して、かろうじてあったお米を明日の朝用に予約セットした。

一泊させてもらったお金は受け取ってもらえないだろうから、せめてものお礼。
朝食くらいは作ろう。
って言っても、食材は全部坪内さんちのだけど。

お風呂上がりの坪内さんは本当に色っぽくて、目のやり場に困った。
いや、もちろん服は着ているんだけど、何て言うのかな、イケメンオーラ全開でキャーキャー言われるのがわかる気がする。
そんな人が、私を好きとか言う。
本当に意味がわからないよ。

「坪内さん、これ。」

私の差し出した手を坪内さんが受け取る。

「何これ?」
「この前のランチ代です。一緒に住むならもらうって言ったじゃないですか。一泊だけど一緒に住んだんだから受け取ってください。」

先日の中華料理屋さんの日替りランチ850円。
きっちりお釣りのないように渡す。

「秋山、お前律儀すぎ。めっちゃ笑える。」

お腹を抱えて笑いだした坪内さん。

「お前やっぱり面白いな。」
「そこ笑うとこですか?」

ひーひー言いながら大爆笑だ。
そんな彼を私は冷ややかな視線で見る。
笑いすぎて目尻に涙まで溜まってるよ。

「ちょっともう、笑いすぎですよっ。」

私が困惑ぎみに言うと、坪内さんは目尻を下げたまま、

「秋山、好きだよ。」

と言った。

はっ?
ちょいちょいちょい。
不意討ちすぎてヤバい。

なんなの、この人。
胸を貫かれたような感覚がして気が遠くなった。
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