腹黒上司が実は激甘だった件について。
いつもお昼は外のお店で食べたり、コンビニで買ったりしている。
オフィス街なので、ランチのお店には困らない。

「秋山は何が食べたい?」
「坪内さんが食べたいものに付き合いますよ。」

私の食べたいものを聞いてくれるとは、さすが王子だ。
特にこだわりのない私は、坪内さんの半歩後ろをついていく。
連れてこられたのは、最近できた可愛いパスタ屋さんだった。

「あっ、ここ!気になっていたんです!」

私がはしゃいだ声で喜ぶと、妖艶な笑みが帰ってきた。
その王子様スマイルはやめて。
素敵すぎて癒しを越えて目に毒だよ。
少しドキドキしてしまったのを悟られないように、私はメニューに目を落とした。

メニューが多くて迷ってしまう。
散々迷ったあげく、私はお店自慢のカルボナーラにした。
坪内さんは和風明太子パスタ。
そっちも美味しそう。

「秋山のカルボナーラ美味しそう。一口食べさせて。」

そう言ったかと思うと、私の返事も聞かずに自分のフォークで勝手にひとすくいしていく。

「旨いな、さすが店自慢のカルボナーラ。」

満足そうに頷く姿を唖然と見ていたら、「俺のも食べる?」と言って自分のフォークでひとすくいして、私のお皿に和風明太子パスタが置かれた。

自然すぎて文句が言えない。
気にしなければいいのかもだけど、気になるでしょ。
普通ただの上司がそんなことする?

どぎまぎしながら食べると、明太子パスタも美味しかった。

「このお店当たりですね。」
「だな。でも、昼時は並びそうだな。」

よく見ると入口付近にすでに待っている人がいた。

「早飯のときにまた来ような。」
「はい。」

返事をしたものの、え、また来よう”な”。なの?
私も一緒にって意味ですよね。

不覚にもときめいてしまった。
そりゃ女子がことごとく落ちるわけだ。
私ですらドキドキしてしまったもの。
あんな優しい顔を見せられたら心臓がいくつあっても足りないよ。
< 4 / 89 >

この作品をシェア

pagetop