腹黒上司が実は激甘だった件について。
坪内さんの強引さに負けて、結局全部食べさせてもらった。
途中、坪内さんも「味見」とか言いながら食べてたけど。
甘いの好きじゃないくせに、私が食べるものは一口食べたがる。
うん、美味いな、なんて言って合わせてくれる。

「お昼、お粥でも作ってやろうか?」
「坪内さん、料理できるんですか?」

突然の提案に、私は完全に疑いの眼差しを向けた。
自炊しなくはないみたいなことを言っていたし、キッチンにも最低限の道具は揃ってるから、料理したことはありそうだ。
だけど、一緒に暮らし初めてから坪内さんが料理するのを見たことない。
私の眼差しなどどこ吹く風な坪内さんは、

「昼まで寝とけよ。」

そう言って私の頭を撫でてから、部屋を出ていった。

あーもう、本当になんなの。
なんでそんなに私を甘やかすの。
こんなの、どんどん好きが膨らんでしまうじゃないか。

私はベッドに横になると濡れタオルを目の上にのせた。
ひんやりして気持ちがいい。
こんな気遣いだって、普通してくれないでしょ?
ふいに、奈穂子の言葉がよみがえる。

『好きな人に甘えることの何が悪いの?』

素直に甘えたい。
甘えるためにはちゃんと自分の気持ちを坪内さんに伝えないと。

考えていたらいつの間にかまた眠っていた。
途中、濡れタオルを替えてくれたみたいだけど、私は気付かずにぐっすり眠りこけた。
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