腹黒上司が実は激甘だった件について。
帰り支度を始めた私のところに、珍しく奈穂子が顔を出した。

「日菜子、一緒に帰れる?ちょっとお茶でもどう?」

二人、定時で上がって、駅前のカフェへ行く。
私はいつものほうじ茶ラテ、奈穂子はカフェオレ。
ここ最近の定番だ。
このカフェのほうじ茶ラテが美味しくてハマって、毎回違うものにしようか悩みつつも注文してしまう。

そういえば坪内さん、ほうじ茶ラテのアイスクリーム買ってきてくれたな。
私が好きなの、ちゃんと覚えててくれてたんだ。
今更ながら気付く。

「王子様と付き合ってるって噂、また流れてきたよ。」
「あー。」
「ついに告白した?」

奈穂子の目がとんでもなく楽しそうだ。
早く聞かせろと言わんばかりにキラキラしている。

「残念ながら告白してないよ。」
「なーんだ、つまんない。」

奈穂子はわざとらしく唇を尖らせた。

「ちょっと、楽しんでるでしょ。」
「真剣だよ!日菜子の人生かかってるんだから。」

その割には口元がニヤニヤしている。
素直に告白できたらね、どんなにいいことか。
私は短いため息を落とした。
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