腹黒上司が実は激甘だった件について。
私のメインの仕事は庶務だ。
議事録作成に時間をとられて、庶務業務がたまってしまった。
しかたない、今日は残業だ。
黙々と仕事をしていると、坪内さんがやってきて言う。

「遅くなって悪かったな。」
「いえ、私が理解できなかったのがいけないんです。こちらこそ、坪内さんのお時間を取らせてすみませんでした。」

何度も質問する私に、坪内さんはその都度手を止めて丁寧に教えてくれた。
悪魔とか言ってごめんなさい。
意外と優しくてびっくりです。

「飯でも食ってくか。」
「ええっ。お金ないので帰ります。」

突然の坪内さんの提案に、直ぐ様お断りする。
いくら悪魔で腹黒で口が悪くて態度がでかい俺様だとしても、社内では”王子様”ともてはやされているのだ。
誰かに見られでもしたら、女子の反感かうに決まっている。
それでなくてもランチも一緒に食べたというのに。

「奢るから付き合えよ。」
「お昼も奢ってもらったので遠慮します。」

私の言葉に、坪内さんの眉間にシワが寄った。
イケメンは不機嫌になってもイケメンだな。
なんて悠長に顔を眺めていたら、

「うるせぇ、付き合え。上司命令だ。」
「はぁ?こんなのパワハラでしょ?」

私の抵抗むなしく、腕を捕まれ引きずられて行く。
これはパワハラでありセクハラでもあると思うんですけど。

フロアを出るとき、課長は憐れみの目で見ながら苦笑いしていた。
見てたなら助けてよ、課長。
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