腹黒上司が実は激甘だった件について。
部屋の明るい灯りの下で、改めて坪内さんと向き合う。
好きだと言ったけれど、急に恥ずかしさでいっぱいになった。
な、何か言わなければ。

「ご、ご飯作りますか?」

テンパって出てきた言葉は、色気より食い気だった。
とたんに坪内さんは笑い出す。

「俺はご飯より日菜子を食べたい。」

あああ。
好きだと言ったとたんに名前呼びだよ。
それに私を食べたいとか、肉食にもほどがある。
心臓がいくつあっても足りないくらいだ。

坪内さんは私を引き寄せると、さっきよりも激しくキスをした。
すごく優しくてこのまま流されそうになるのを必死でこらえる。

「まっ、待ってください。」
「何?」
「聞いてほしいことがあるんです。」

好きな気持ちは伝えた。
あとは不安な気持ちを伝えなければ。
私のトラウマを。
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