古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
「なにがいかんの。だったらどうするの? 次の仕事のあてはあるん?」
「それはこれから探して……」
「だからそれがそもそもおかしいて言うてるの。次の仕事のあてもないのに考えなしに仕事を辞めるなんてちゃんとした大人のすることやないわ。それとも、そんなに急に辞めなきゃならない理由でもあったんか?」
「それは……」
あった。
思いっきりあった。
それがなければ私だってこうなることが分かっていて、実家に帰ってきたりなんかしなかったわよ!
けどその「理由」を話したら母は余計に怒って手がつけられなくなるに決まってる。
「ま、まあまあ、お義母さん」
再び沙代里ちゃんが割って入る。
「悠花ちゃんも帰ってきたばかりで疲れてるやろし、とりあえず今日のところはそれくらいで。あの、それから明日なんですけどまた奈江をお願いしてもよかったですか? お稽古の間、二時間くらいなんやけど」
「あら~。もちろんええわ。喜んで。奈江ちゃん。明日はばあばと一緒に遊んでくれるか?」
母が、うってかわった機嫌の良い声で振り返る。
「うん! 奈江ちゃんな、鹿さん見に行きたい」
「ええよー。でも明日も暑そうやから、すこーしだけ鹿さんを見たらそのあと、かき氷食べに行こか」
「わあい、行きたい。行きたーい」
奈江ちゃんがはしゃいで膝に飛び乗ると、母は蕩けそうな笑顔になった。
「奈江ちゃんは賢いさんやねえ。……あ、そう言えばサヨちゃん。明日は笹山のお祖母ちゃんのところだったわねえ?」
「はい。明日はお茶をお願いしとります」
「ちょうどええわ。悠花もサヨちゃんと一緒に行って来」
「ええっ、なんで?」
「それはこれから探して……」
「だからそれがそもそもおかしいて言うてるの。次の仕事のあてもないのに考えなしに仕事を辞めるなんてちゃんとした大人のすることやないわ。それとも、そんなに急に辞めなきゃならない理由でもあったんか?」
「それは……」
あった。
思いっきりあった。
それがなければ私だってこうなることが分かっていて、実家に帰ってきたりなんかしなかったわよ!
けどその「理由」を話したら母は余計に怒って手がつけられなくなるに決まってる。
「ま、まあまあ、お義母さん」
再び沙代里ちゃんが割って入る。
「悠花ちゃんも帰ってきたばかりで疲れてるやろし、とりあえず今日のところはそれくらいで。あの、それから明日なんですけどまた奈江をお願いしてもよかったですか? お稽古の間、二時間くらいなんやけど」
「あら~。もちろんええわ。喜んで。奈江ちゃん。明日はばあばと一緒に遊んでくれるか?」
母が、うってかわった機嫌の良い声で振り返る。
「うん! 奈江ちゃんな、鹿さん見に行きたい」
「ええよー。でも明日も暑そうやから、すこーしだけ鹿さんを見たらそのあと、かき氷食べに行こか」
「わあい、行きたい。行きたーい」
奈江ちゃんがはしゃいで膝に飛び乗ると、母は蕩けそうな笑顔になった。
「奈江ちゃんは賢いさんやねえ。……あ、そう言えばサヨちゃん。明日は笹山のお祖母ちゃんのところだったわねえ?」
「はい。明日はお茶をお願いしとります」
「ちょうどええわ。悠花もサヨちゃんと一緒に行って来」
「ええっ、なんで?」