古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
それだけでもいい加減うっとうしいのに、そのあとには決まって

「それであんたはどうなん? 百貨店なんて女の人ばっかりなんやろ? お付き合いしとる人はおるん? 自分で見つけられんのやったらこっちでいい人探しとくから一度お見合いしてみ」

と続くのだ。

二十七歳。微妙なお年頃の女子としては帰省の回数が、次第に減っていったとしても誰も責められないのではないだろうか。

それがこんな形で帰ってくることになろうとは……。

私は、今朝から何度目かもわからないため息をついて、はあっと空を仰いだ。

ああ、やっぱりどうしたって気が重い……。

勤めていた百貨店を退職して、奈良へ帰ることにしたと連絡を入れたのは一昨日のことだった。

退職願いを出したのが一ヶ月前。

私がいたのは百貨店のなかでも外商部と呼ばれる顧客の対応をする部署だったので、担当のお客さまへのご挨拶と引継ぎが終わったのが二週間前。

残っていた有給を消化するかたちで実際の退職日よりも二週間はやく最終出勤を終え、休日を使って賃貸の部屋の解約や、退職、転居にともなうさまざまな手続きを進めながらも、私はなかなかそれを実家──母に伝えることが出来なかった。

何度もスマートフォンの電話帳を繰って実家の番号を表示させながらも、どうしても通話のボタンを押すことが出来ずにぐずぐずと日を過ごした。

こちらで使っていた家具家電のほとんどを処分、またはリサイクルに出し終わり、残りの荷物もダンボールに詰め込んで宅急便の集荷の手配をし、新幹線のチケットも抑え終わって、もう今、連絡しなければ送った荷物の方が先に実家に着いてしまう、という段階になってようやく電話をかける踏ん切りがついた。

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