古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
第二章 白玉あんみつとほうじ茶ラテ
薄と白菊、あとは桔梗に竜胆と……あとはどうしようかな」

「こちらの藤袴なんかも秋の花材ですよ」
「じゃあ、それも」

 近鉄奈良駅の南にある、もちいどのセンター街。ちなみに漢字だと「餅殿」と書く。

250mほどの長さのアーケードのなかに大小、新旧とりまぜて100店舗以上のお店が並んでいる商店街である。そのなかの一つ、「花たちばな」という花屋さんの店先で私はお花を選んで貰っていた。秋らしい草花を選んで包んで貰い、お金を払う。

「いつもありがとうございます」
何度か訪れているので顔見知りになっている店員の女性からお釣りを受け取ってお店を出る。

レストランや喫茶店、パン屋さんに雑貨屋さんなど色々なお店が並んでいる商店街を南側に抜けると、もう「ならまち」にある元興寺さんの屋根が見える。

アーケードを出ると、私は手に持っていた水色の日傘をさした。
九月に入り、一時期の歩いているだけで倒れそうになるような酷暑と比べたら、だいぶ和らいだとはいうものの、まだまだ日差しが強い日が続いている。

(和服であんまり真っ黒に日焼けしてるっていうのもちょっと不釣り合いだものね)

ほとんど、勢いと成り行きで「和カフェ・あじさい堂」で働くようになってからはや一ヶ月以上がたっていた。

(なんだかあっという間だったなあ)

毎日覚えることや、やることが多すぎて夢中で取り組んでいるうちにいつの間にか日にちが経過してしまっていた、という気がする。

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