古都奈良の和カフェあじさい堂花暦
「きゃ……っ」
ぐらっと体が傾く。
焦って態勢を立て直そうとしたけれど、7センチのウェッジソールでは踏ん張りがきかない。
そのまま階段にむかって倒れそうになったのを、
「危なっ!」
後ろからぐいっと引き戻された。
かわりに踏ん張ろうとした拍子にぶつかってしまった黒のキャリーが派手な音を立てて階段を転げ落ちていく。
一番下まで落ちてアスファルトに叩きつけられたキャリーはそのまま勢いあまって車道の方まで滑っていく。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「ちょっとここで待っとって」
腕をつかんで後ろから支えてくれたその男性は、わたしをその場に座らせると飛ぶように石段を駆け下りていった。
車道に出てしまったキャリーを拾い上げ、落下の拍子に破損したらしい部品も拾ってくれている。
「あ……」
自分で拾わなきゃ、と立ち上がりかけると
「ええよ! そこで待ってて!」
と下から制された。
まだ若い男性だけれど、陶芸家のひとが着るような藍色の作務衣を着ている。
キャリーを運び上げてくれながら、彼は階段の途中でその様子を見ていた小学校低学年くらいの男の子にた何か声をかけた。
男の子は黙ってぱっと走って行ってしまった。
ぐらっと体が傾く。
焦って態勢を立て直そうとしたけれど、7センチのウェッジソールでは踏ん張りがきかない。
そのまま階段にむかって倒れそうになったのを、
「危なっ!」
後ろからぐいっと引き戻された。
かわりに踏ん張ろうとした拍子にぶつかってしまった黒のキャリーが派手な音を立てて階段を転げ落ちていく。
一番下まで落ちてアスファルトに叩きつけられたキャリーはそのまま勢いあまって車道の方まで滑っていく。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「ちょっとここで待っとって」
腕をつかんで後ろから支えてくれたその男性は、わたしをその場に座らせると飛ぶように石段を駆け下りていった。
車道に出てしまったキャリーを拾い上げ、落下の拍子に破損したらしい部品も拾ってくれている。
「あ……」
自分で拾わなきゃ、と立ち上がりかけると
「ええよ! そこで待ってて!」
と下から制された。
まだ若い男性だけれど、陶芸家のひとが着るような藍色の作務衣を着ている。
キャリーを運び上げてくれながら、彼は階段の途中でその様子を見ていた小学校低学年くらいの男の子にた何か声をかけた。
男の子は黙ってぱっと走って行ってしまった。