キミ
夏休み。いつものお祭りでひときわ綺麗な女性を見つけた。周りに流されない大人の雰囲気、日本人形のような真っ黒な髪。お団子に結われついつい見てしまううなじ。
見とれてしまった私は思うままに目でおってしまっていた。
「まこー。」
急に呼ばれた名前が一瞬自分だと言うことを忘れてしまった。
「何見てたのさ」
付き合って一年半もたった打海は、相変わらずぼーっとした性格の私の手を引いてこうしてお祭りに誘ってくれている。
「いや、綺麗な人だなーって思って」
打海はふーんと流して屋台に目をやった。
「かき氷食べよ」
打海の浴衣姿は大学生か大人に見える。
180センチはあるであろうその背丈は強く遠く見える。
JKというものはこんな人を彼氏にしたがるのだろうなとふと思った。
「いちごとメロンください」
屋台のおばさんは゛仲良さそうなカップルだね~゛とにっこり笑って言う。
「どうも」
打海がはにかんだような笑いを私に向けて言う。
「良かったな。仲悪そうって言われなくって」
私も笑い返す。
「まいどあり~」
いちごとメロン味のかき氷は山盛りに盛られ夏をいっそう夏らしくする。

チリン シャララン チャリン

屋台に飾られた風鈴が夏を知らせる。
蒸し暑い夜は瀬田神社の外れにある石段に座って涼むのが1番気持ちがいい。
「あ、やべ。俺、神輿担いでこないと」
お父さんの手伝いをしている打海は毎年、神輿を担いで町内を回る。これも伝統行事。
「行ってらっしゃい」
打海は゛じゃあまた石段のとこで待ち合わせ゛と言って瀬田神社を駆け抜けていった。
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