聞きたかったコトバ
「あ、そうなんだ。じゃあまた明日。」
「うん、また明日。
あ、そうだ。アドレス交換しようよ。」
そういえば、他のみんなとは交換したのに忘れてた。
というより聞くタイミングがつかめなかったというか…
「あ、そうだね。忘れるとこだった。」
赤外線通信。
便利になったものだ。
「私、自分からはあんまり送らないから。
送ってね。」
ふっと笑顔をつくる。
やばっ、かわいい。
そんな動揺を必死にかくそうとする。
しかし
「やっぱ桐ケ谷くんおもしろい。
じゃあまた明日ね。」
やはりペースはあちらにあるようだ。
「うん、明日。」
けっきょく不完全燃焼のまま無情にもバスがきた。
「じゃあバイバイ。」
手をふる。
夏木さんは一瞬なにか考えたふうで
「夏木さんじゃなくて、しずくで呼んで。」
なぜか急に距離が近くなった気がした。
「オッケー。じゃあ俺のこともヒロヤで呼んで。」
しずくはふふっと笑って
「当たり前でしょ。」
そう言ってバスに乗り込んだ。