ねぇ、泣かないでよ。
「あ、ごめんね。これ、渡したかっただけ」
「なに、これ」
「ソウちゃんが借りてやつ。」
「あー。つか、月島が来りゃいいじゃん」
「そう、なんだけどさ!、、話、したくて」
「何。」
颯汰くんとも関係あるのか。このふたりの関係に。
んー。和くんとこの子は元恋人で、この子と颯汰くんは、、、
いや。まさかね。
「私ね、本当は」
「復縁ならしないよ?」
「え、、で、でも、話くらい聞いてくれても」
「月島の方に行った誰だっけ?」
「それは」
「俺さ、美咲みたいに平気に嘘つく人。嫌いなんだよね」
「かず、違うの」
「つか、何年前の話してんだよ。俺らもう高2。俺、好きな人いるし、迷惑」
空気は読めるつもり、察しもできるはず。
でも、この会話で彼らの関係や物語を想像するのは嫌だった。
「ソウちゃんは、私にとって友達だよ?」
「友達ね」
「私が好きなのは、ずっとかずだけ」
「この茶番さ、いつまで付き合えばいい?マジだりぃ」
「ひ、ひどい」
「友達でもキスすんの?」
「へ」
「男でも、友達なら平気で部屋あげんの?」
少しずつ青ざめてく彼女に、関係ない私も同情してしまった。
母親が昔浮気を問い詰めた何股男のようだった。
「なんもしてない」
「あっそ。」
でも、彼女にとっては少し幸せな苦しみなのかもしれない。
『別れた相手に嫉妬するのは、まだ好きな証拠だよ』
そう、祖母が母親に教えていた。
泣きそうになっている彼女を冷たく突き放す和くんは、苦そうに不味そうに私の手を無理矢理引っ張った。
「か、ずくんっ」
「ごめん。、、ごめん」
その謝罪は、私に向けられてるようで彼女に向けられてるようにも思えた。
長い男の子の歩幅に合わせるのは少し大変だった。
でも、意外にも和くんの手の力は痛くなかった。