ねぇ、泣かないでよ。
颯汰くん
次の日。学校を休んだ。
行けなかったんだ。どんなに『幼児パンツ』とからかわれようが、休むことはなかったのに。
両親は小3の時に離婚していて、一緒に家を出た母親は中2の時に男と逃げた。
今は祖母が面倒をみてくれている。
スナックを経営してる彼女は、お手伝いをする代わりに授業日などを出してくれている。
「寝ててもいいけど、夜は働いてもらうよ」
「、、はぃ」
ケータイにはクラスの友達が気を使ってくれるメールの受信を知らせる。
- どうしたの?
- 大丈夫?
- お大事にね。
『幼児パンツ』とからかわれても、友達は助けてくれる。
優しい同情で。
「ねぇ、泣かないでよ」
その言葉。久しぶりに聞いたな。
小学校の頃仲の良かった男の子、颯汰(そうた)くん。泣き虫だった私はよく彼にそう言われていた。
本当は、彼にかまって欲しくて泣くふりをした時もあった。
彼が小5の時に転校してしまって以来は噂も名前も聞かなくなった。
「泣かないでよ。、、か。」
颯汰くん。
でも、あの時の人とは違う。もっと小さくて、可愛くて、誰かを蹴ったりなんかしなかったもん。
って、昔の颯汰くんしか知らないからな。