アダム・グレイルが死んだ朝
私は、家族とは思えない継母と義理の兄のもとに取り残されることになった。
父の秘書だった男がこの家に頻繁に出入りするようになったのは、その直後のことだった。全ては計画通りだったのだろう。あの女は、最初から父の命がもう長くないことを知っていたのだ。
そんなことを知らずに、私はどうにか普通の家族になろうと努力していた。だから父が亡くなった時、私は初めての絶望を味わった。
唯一救いだったのは、父が馬鹿ではなかったことだ。
いつから気づいていたのかわからないけれど、父の遺書にははっきりと遺産の相続について書かれていた。
一人娘である私と、私が二十歳になるまでの面倒を見た者にその遺産を渡すと。
私のことを邪魔に思っていたあの女は、さぞ落胆しただろう。父が死ねばすぐにでも、私を遠い親戚に押し付けるつもりだったのだから。
それからもう一つ、あの頃の私は、澪のことを嫌ってはいなかった。むしろ義理の兄として、好意的に思っていた。
あからさまに私に冷たい態度を取る継母と違い、澪はいつでも優しく接してくれた。その大きな手で髪を撫でて慰めてくれた。そのことが余計に、継母が私を嫌う理由になっていても、澪はそうすることを止めなかった。
だから私は澪が嫌いではなくて、ちゃんとその名前を呼んでいた。