アダム・グレイルが死んだ朝

「やだ、やめて」

「やめない」

「澪っ」

引き寄せられた身体が硬直した。
怖かった。何が?

「好きだよ、紫奈」

そうやってまた、私は壊される。
ただ普通の幸福を味わいたいだけなのに。

澪は私にキスをした。
噛みついて、それから優しく包むようなキスをした。


嫌いだ。全部。

澪も澪を取り巻く世界も、私自身も。

澪はいつだって、兄の顔をして私を壊す。










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