アダム・グレイルが死んだ朝
「澪君、帰って来たんだ」
「またすぐ居なくなるよ」
「なんか話したりした?」
「・・・別に」
夜九時を過ぎたファミレスで、里子と向かい合って座る。
テーブルの上には里子が頼んだオムライスと、私が頼んだたらこのクリームパスタが並ぶ。それから定番のポテト。
里子(サトコ)とは中学の時からの付き合いだ。
友達と呼ぶには互いの事を知り過ぎてしまって、親友と呼ぶには嫌いなところが多過ぎる。
それでもこうして時々顔を合わせる。
「彼氏でも作れば?」
「なんで?」
「その方が澪君も楽になるんじゃない」
「何それ。なんであいつが楽になるの?もう充分勝手にやってるのに、これ以上何から楽になろうって言うのよ」
楽になりたいのは私の方だ。
「地獄ね。あんたたち兄妹」
「その言い方止めて」
「でも事実じゃん」
「あんなの、兄だと思ったことない」
「だったらなんなのよ」