硝子の花片
ガシッ

私は沖田さんに左腕を掴まれて引き寄せられた。

どこからそんな力が出て来るんだろう、
沖田さんの腕を見ると細身だが無駄の無い筋肉があった。剣士の手だ。

さっきまで魘されていた沖田さんの寝巻は少しはだけて、鎖骨や胸筋が見えてしまっている。

そして目の前には真剣な表情の沖田さんの端正な顔がある。

私はもうどこを見れば良いのか分からなくなってしまった。

沖田さんの目を見てしまえば何もかも見透かされてしまう。そう思った。

「…貴女は優しい人だ。だからこそ他人の為に心を追い込んでしまっている…。
私は悪夢から救われる為に貴女を追い込む事なんて望んでない。

だから…そんなに自分の事嫌にならないで…。」

沖田さんはふわっと笑った。

気付くと私の頬に1つの筋が伝っていた。

沖田さんは優しく微笑みながらその雫を拭った。

「あっ…」

沖田さんはなにかに気づいたように目を大きく開くと素早く私に背を向けた。
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