硝子の花片
「ごっ、ごめんなさいっ!腕、痛かったですよね…。本当にごめんなさい…!」

沖田さんは私に背を向けたまま肩を竦めた。

耳は真っ赤になってしまっている。

私まで顔が赤くなってしまった。
だって…あんな間近で言われたんだもの!

それに、弱音を吐いた自分が恥ずかしい…。


私は今更ながらに気付いた。
弱音なんて吐いても意味が無い。
新撰組の人達はなんだかんだ言っても優しいから、逆に心配かけるだけなんだ。

…私には心配してくれる人が、この時代にも居てくれる。

いつの間にか新撰組の人達がかけがえのない仲間になっていたんだ。

私は何も出来ないわけじゃない…沖田さんみたいに私に救われたって言ってくれる仲間がいる。私は考えるだけの人間じゃない…!

なんだか現代にいた時から喉の奥に詰まって苦しかったものが、ここに来てなくなった気がする。

「あのっ、ありがとうございますっ!
…ずっと、この時代に来て何も出来ない自分の無力さが嫌になってました。でも。
こんな私でもお役に立てたなら嬉しいです!」

私は涙を流した事なんて忘れて思いっきり笑った。

こんなに表情筋が素直に動いてくれたのは、初めてかもしれない。

こんなに嬉しくなったのも、今まであっただろうか?
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