硝子の花片
それは朝食の直後の事だった。

「…桜夜。ちょっといい?」

平助くんは少し深刻そうな顔をしていた。少し幼く見える整った顔に珍しく影が落ちていた。

「うん、いいけど…どうしました?」

平助くんがそんな顔をするのは私が見る限り初めての事で、今朝も一緒に笑っていたから不思議に思ったのだ。

「…少し場所変えよう」

平助くんが心配なのでとりあえず話を聞きたかった。
なんでそんな顔をしているのか、私に出来ることなら役に立ちたかった。


私達は中庭に面している縁側に座った。

「…今朝さ、総司、魘されていなかった?」

平助くんは険しい顔で聞いた。

「うん。珍しく凄く魘されていた…」

「やっぱり?」

平助くんは何かを知っているように言った。
その何かは、一体何だろう…?

知りたいのに、怖かった。

平助くんと沖田さんの、新撰組のみんなの、鍵をかけた何かを知るのが、躊躇われた。

私は結局部外者だから。

でも平助くんは私に話そうとしている。
…きっと、私にしか出来ないことがある。

私は今朝の沖田さんの言葉を信じて平助くんの次の言葉を待った。
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