硝子の花片
この血で穢れた手であの人に触れたくない…。

穢したくない。護ってあげたい。

でも、それは出来ない。


私が近付いてしまえば最後、彼女は壊れてしまいそうだから。
…怖い。





(あれ、私は何故こんな事を思っているんだろう。
この感情は、何。)






















屯所の前に着くと夏の闇の中に丸く欠けるところのない血に染った暁が浮かんでいるのが見えた。

その暁が、不吉だと普通なら思うのに、私には妙に美しく儚く悲しく見えた。


「…君も泣いてるんだね。」




沖田の紅い瞳が悲しく揺れた。
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