硝子の花片
私は縁側に座って暁を眺めていた。

「血みたいに真っ赤…」

今夜、夜空に浮かんでいる暁は見たことも無いような鮮やかな紅い色をしていた。

なんとも妖しい色だ。

…何かの予兆なのか、とふと思った。

嫌な事じゃ無ければ良いけど…。


そんなに上手くは行かないかな…


「…そういえば、そろそろ夕食の時間だ。…沖田さん、まだ帰ってきてない…」

心配になり、屯所の門に駆けていった。
(…こんなに心配性だっけ?)
自分の行動に疑問を持ちながら。


門の前に立ち尽くす人がいる。
その人はただただ暁を見上げていた。

その綺麗な横顔は、悲しそうだった。

「…沖田さん?」

私の声に気付き、その人ー沖田総司は顔を向けた。

悲しげな表情は一変し、いつもの笑顔になる。

(…いつもは笑顔を貼り付けてるんじゃ?)と私は思った。

「あれ?桜夜さん。どうしたんです?」

「…どうしたじゃないですよ、遅いから見に来たんです!もう夕食時も遅いくらいですよ」

私はムッとして言った。心配したのに!って思ってしまったからだ。

「ふふっ、心配性だなあ。じゃあ、一緒に夕食食べに行きますか。」

そう言って沖田さんは私の横を通り過ぎた。
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