硝子の花片
「うん…」

瑞奈の顔は笑顔ではなかった。

その端正な顔に影がさし、彼女はその長い睫毛を伏せた。

「瑞奈…?」

彼女がそんな顔をするのは初めての事だった。


心配になって彼女の肩に触れようとした時だった。

サァッと強い風が窓から入り込み、桜の花片が視界いっぱいになり、瑞奈の姿が見えなくなってしまった。

私は驚いて目を瞑った。
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