硝子の花片
沖田side


私は馬を貸してもらい、江戸へと続く街道を走った。


(山南さん…どうして)

移りゆく景色が走馬灯のように山南さんと過ごした日々となって私の廻りを駆ける。

懐かしい日々が私の心を揺らす。



私は、最悪の場合を予測していた。

山南敬助切腹という、最悪の場合を…。


山南さんが元気がないのは知っていた。
伊東さんが来てからというもの、
居心地が悪そうにしているのも知っていた。

だけど。


(…なんで春まで待ったんだろう。)

山南さんは山桜みたいな感じの人だから、春にこだわったのかもしれない。



でも、それが間違いだった。


山南さんの心は、私が思っているよりズタズタになっていたんだ。




(…私は、酷い人間だな)

ふとそんなことを思う。



私は昔からそうだった。

人から沢山のものを得るのに、人にそれらの恩を仇で返す。

人の心なんて考えられもしなくて、廻りを見てるようで見えてない。

自分の心さえも分からない、人間として最低な人間だ。


(…山南さん。私は成長したでしょうか。
…でも、どんなに成長したって貴方を助けられないんじゃ、人間として最低です…)




ああ、そろそろ京を抜ける。


山南さん、何処ですか。

何を思っていますか。

私の知らない何処かへ、逃げていますか。

願わくば貴方が見つかること無く、生き長らえますように。




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